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「ぼくがやる!」混雑するセルフレジの前の親子。「お前がやれ!」と毒づく高齢者。40代パート主婦が語る、前途多難な昨今のセルフレジ事情

社会

2024年の秋、セルフレジは日本全国のスーパーマーケットやコンビニエンスストアで一般的な存在となっています。しかし、その便利さとは裏腹に、導入以来さまざまなトラブルが発生しており、利用者の間では混乱や苛立ちが生じています

セルフレジ導入から5年が経過したあるスーパーマーケットでパートをしている東梨花さん(仮名・45歳)は、日々の現場で多くのセルフレジトラブルに直面しています。「便利なはずのセルフレジが、混雑時になるとお客様同士の小競り合いや、機械に慣れないお客様の戸惑いを生んでいます」と東さんは話します。

セルフレジ導入の背景

日本国内のスーパーマーケットにセルフレジが導入され始めた背景には、労働力不足や人件費削減の課題がありました。特に、人口減少が進む中で、店員の数を減らしても効率的に店舗運営を行うためには、顧客自身が会計を行うセルフレジが適しているとされました。また、コロナ禍で非接触型のサービスが注目され、セルフレジの導入は一層進みました

しかし、技術が進んでも、人々の生活や習慣が変わるには時間がかかります。特に年配の方や機械に慣れていない人にとっては、セルフレジの操作が難しく感じられることも多いようです。東さんは「セルフレジが設置されてから、年配のお客様から『機械は苦手だから普通のレジでやってほしい』という声もよく聞かれます」と語ります。

混雑するセルフレジで起きた親子のトラブル

ある休日の夕方、スーパーは通常よりも多くの客で賑わい、セルフレジもすべて稼働していました。そんな中、一組の親子が周囲の視線を集めていました。東さんはその場面を鮮明に覚えています。

「5歳くらいの男の子が、母親と一緒にセルフレジに並んでいたんです。『ぼくがやりたい!』と男の子が駄々をこね始め、大泣きしていました。母親も困った表情で、他のお客様の目を気にしていましたが、ついに観念して子どもにバーコードスキャンを任せたんです」と東さん。

その結果、子どもは一つ一つの商品をスキャンするのにかなりの時間をかけ、周りに並んでいる客たちは次第に苛立ちを隠せなくなりました。「混んでいる時間帯でのこうした場面は、見る側としてもやはりストレスになるんですよね」と東さんは言います。

この場面を目撃した一人の高齢者が「お前がやれ!」と母親に向かって毒づく姿も見られました。母親は謝りながらも子どもをなだめつつ、どうにもならない状況に困惑している様子でした。このようなトラブルは、セルフレジが普及するにつれてますます増えてきています

セルフレジを利用する親子の事情

小さな子どもにとって、セルフレジはお店屋さんごっこを楽しむ場のようにも感じられます。大人にとっては会計の手続きに過ぎませんが、子どもにとっては「自分でやってみたい」という強い欲求が芽生える瞬間です。東さんも「親として、子どものやりたい気持ちを尊重してあげたい気持ちは分かります。自分も子どもが小さいころは、そういったシチュエーションで悩んだ経験があります」と話します。

ただし、東さんは「社会勉強になるとはいえ、混雑している時間帯でこういった場面は、お店側や他のお客様にとって迷惑になることもあります」とも指摘します。混んでいない時間帯であれば、親子でゆっくりとセルフレジを使うのは問題ありませんが、ピーク時には速やかに会計を済ませる必要があるのです。

セルフレジの問題点

セルフレジは確かに便利な側面がある一方で、操作がスムーズにいかないと、トラブルの原因となります。東さんは「操作に慣れている方でも、バーコードがうまく読み取れなかったり、袋詰めの際に重さのセンサーが反応しなかったりすることがよくあります」と言います。こうしたトラブルが重なると、セルフレジが一時停止し、スタッフを呼ばなければならない状況になります。

特に混雑時には、この一時停止が連鎖的に起きることで、待ち時間が増え、お客様同士の苛立ちが高まる原因となります。東さんは「見回りのスタッフとして、こうしたトラブルが発生するたびに現場に急行しなければならないのですが、お客様同士のいざこざに巻き込まれることも少なくありません」と現場の苦労を語ります。

セルフレジ利用者の多様な反応

一方で、セルフレジに慣れている利用者も増えてきました。中には「ICタグが普及すればもっと簡単になる」といった未来の技術に期待する声もあります。実際、バーコードをスキャンする手間を省く技術として、ICタグの導入が進められています。これにより、商品をかごに入れたまま一括で会計できる仕組みが実現すれば、セルフレジの問題点は大幅に軽減されるでしょう。

しかし、現状ではまだ多くの店がバーコードに依存しており、特に高齢者や技術に不慣れな利用者にとっては、セルフレジは使いづらいという問題があります。「数年後には皆がセルフレジに慣れるだろう」という楽観的な意見もある一方で、今の混雑時のトラブルは避けられない状況です。

スーパー側の対応と課題

こうした問題に対して、スーパーマーケット側も対策を講じています。例えば、セルフレジの操作方法をわかりやすく説明するポスターを掲示したり、スタッフが常に見回りをしてサポートする体制を整えたりしています。しかし、根本的な解決には、利用者の意識改革も必要です。

混雑時には速やかに会計を済ませ、空いている時間帯にゆっくりと操作を楽しむ、といったルールを利用者が守ることで、セルフレジのトラブルを減らすことができるでしょう。また、親子連れや高齢者への配慮も重要です。スーパーの店内放送などで、混雑時には親が中心となって会計を行うよう促すことも一つの手段かもしれません。

利用者の意識改革とルール作りの必要性

利用者がセルフレジを正しく効率的に使うためには、まず意識改革が必要です。特に、混雑時には周りの状況をよく考え、自分だけの都合で行動しないことが求められます。親子連れの場合、子どもにセルフレジを操作させることが子どもの成長に役立つ場面もありますが、適切なタイミングを選ぶことが大切です。周囲の利用者が待っている中での時間のかかる操作は、他人に迷惑をかける可能性があるため、空いている時間帯や比較的待ち時間が短いタイミングで試みることが推奨されます。

また、高齢者や機械操作が苦手な人々には、無理にセルフレジを使わせるのではなく、従来のレジを利用できるようにするなど、柔軟な選択肢を残すことも大切です。スーパー側も「混雑時にはセルフレジでの操作は迅速に」「親御さんが中心となって操作を進めてください」といった案内を徹底し、利用者に対して具体的なルールを示すことが求められます。

スーパー側のサポート強化

スーパー側はセルフレジを導入する際に、利用者がスムーズに操作できるようサポート体制を強化する必要があります。現在、多くの店舗ではスタッフがセルフレジエリアを見回り、トラブルが発生した場合に迅速に対応していますが、混雑時にはこれだけでは十分でないこともあります。特に高齢者や親子連れなど、操作に時間がかかる利用者が増える時間帯には、セルフレジ専任のスタッフを配置するなどの対策を講じることが効果的です。

また、セルフレジの操作方法を簡単に説明する映像や、セルフレジの使い方を教える実演イベントなどを定期的に開催することで、利用者に対する教育も重要です。これにより、利用者がセルフレジの操作に慣れ、自分自身でトラブルを回避できるようになることが期待されます。

未来のセルフレジと技術革新

セルフレジの今後の発展として、バーコードスキャンを一括で行うことができる技術、例えばICタグの普及が期待されています。現在はまだ高価で導入が進んでいないICタグですが、これが一般的になれば、利用者は商品を一つ一つスキャンする手間が省け、会計がよりスムーズになるでしょう。この技術が広がれば、セルフレジに慣れていない利用者も簡単に使えるようになり、混雑時のトラブルも減少する可能性があります。

また、人工知能や自動化の進展により、トラブルが発生した場合でもセルフレジ自体が自動的に解決策を提案してくれる仕組みが導入されることも期待されています。これにより、利用者が自分で操作に戸惑ったり、店員を呼ぶ必要がなくなる日が来るかもしれません。

結論

セルフレジは、店舗運営の効率化と利用者の利便性向上を目指して導入された画期的なシステムです。しかし、現状では機械に不慣れな利用者や混雑時のトラブルが多く、利用者と店舗の両方が協力して問題を乗り越えていくことが求められます。親子連れや高齢者、そして機械に慣れていない人々が安心して利用できるよう、利用者側の意識改革と、スーパー側のサポート体制の強化が重要です。

技術の進歩により、今後セルフレジがさらに使いやすくなることが期待されていますが、当面の間は利用者一人ひとりが他人を思いやり、店舗側と協力し合うことで、トラブルの少ないセルフレジ利用を実現していくことが重要です。セルフレジが完全に普及する日を迎えるまでの間、現場では多くの工夫と努力が必要となるでしょう。

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